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「先輩?聞いてます?室長が先輩に聞けって言ったんですけど」
「…えっ?ごめん、何の話?」
慌てて三浦君に顔を向けると、一度は逸らされた彼女の視線がまた私の横顔に刺さるのを感じた。
「年度方針のホテルですよ。今年は僕が手配しろって」
「ああ…それね。
ホテル側も心得てるから大丈夫よ」
三浦君に常宿のホテル名と要領を簡単に説明する間も、彼女達は不自然に沈黙しながら食事していた。
でも、この時に口にしたホテル名が後になって利用されることになるとは、この時の私は全く想像もしていなかった。
しばらくして私達の会話が途切れると、今まで黙っていた連れの彼女が口を開いた。
「ね、唯?
今朝更衣室で見ちゃったよ。
ここ…崎田先輩でしょ?」
クスッと笑いながら、胸元を指す彼女。
いきなりの濃い当て付けに咳き込みそうになる。
「やだ、見えてた?そうなの。
もう、困っちゃうよね」
…わざとらしい。
もう私は崎田さんに何の未練もないのに。
でも、次の攻撃は私の急所を突いた。
「由里はどうなの?
戸川先輩のマンションに行ったんでしょ?」
頭をガンと殴られたように感じた。
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