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由里と呼ばれた子は何も答えず、
ふふ、と意味ありげな含み笑いを返した。
「いい感じだったんだ?
由里は戸川先輩の特別だもんね」
小さめの声、でも確かに私に聞こえるだけのボリュームで、彼女達の会話は続く。
こんな露骨な攻撃は、彼女達にも余裕が無い証拠だ。
折れそうになる心に、そう言い聞かせた。
崎田さんのマンションでらやられっぱなしだったけど、私にもプライドがある。
動揺する顔を見せて相手を喜ばせたくなかった。
それでもやっぱり本音では、戸川君とこの推定元カノとの親密さはショックだった。
「そろそろ行ける?三浦君」
余裕の笑顔を繕って顔を上げると、三浦君も彼女達の会話を聞いてしまったらしく、固い表情で私をチラチラ見ていた。
それには構わず“お先です”と、
彼女達にも柔和な笑顔で会釈して
何か言いたげな三浦君と共に社食を後にした。
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