嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「先輩!…先輩! あいつ、やっぱり最低野郎じゃないですか!」 役員フロアまで戻り、一般社員の姿が見えなくなると、無言で先を行く私に三浦君が後ろから抗議してきた。 「何で戸川君が最低野郎なの?」 顔を見られたくなくて、 前を向いたまま返事した。 「色んな女連れ込んで…」 「あの子は元カノだよ、多分ね。 それに戸川君は色んな女の子と、 って人じゃないと思う」 そう願う。 だけど私の心が痛いのはそこじゃない。 一番近い存在は私じゃなかった…ってことだ。 “片付いたら呼んでやる” そう言ってくれたのに。 引っ越したばかりの部屋に一番に呼んだのは、あの子だったの? 「今はそうかもしれませんけど、 昔は違ったって聞きましたよ! 来る者拒まず、去る者追わず。 奴と大学が一緒の先輩から聞いたから本当です」 また胸が痛む。 三浦君までが容赦無い。 「女なんて誰でもいいって、」 「戸川君のこと、 それ以上悪く言わないで」 一番気の張る敵をやり過ごして、 私はもう戦意喪失していた。
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