嫉妬と煽情と初めての夜#1

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社内にいると、 時に見たくないことも目に入るし、 聞きたくないことも耳にしてしまう。 互いの元恋人がいると特にそう。 自分の目で見た彼だけを信じようと思うのに。 「さっきの人達は、わざと当て擦りを聞かせに来たんだと思う。 これからも同じことがあるかもしれないけどスルーしてくれる? …私は平気だから」 「何であいつのせいで先輩が嫌な思いしなきゃならないんですか」 もうこれ以上戸川君の悪口を聞きたくなくて、仕方なく矛先を変えた。 「…違うの。 元の原因は戸川君じゃなくて、 崎田さんなの」 「え?崎田さんて…」 突然の意外な名前に、三浦君は首を傾げた。 「実はね、この間別れた彼って、 法務にいた崎田さんなの。 原因は彼の浮気というか二股ね。 戸川君は私を庇ってくれただけ。 さっきのうちの一人が崎田さんの相手よ」 「……最悪じゃないですか」 そうボソリと言うと、 三浦君は黙ってしまった。 「そういう訳だから、そっとしといて。 ごめんね。こんなことで迷惑かけて」 ごまかしてごめんね。 私が本当に傷ついたのは、 崎田さんのことじゃないの。 力ない作り笑いを三浦君に投げて、そのまま黙って仕事に戻った。
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