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社内にいると、
時に見たくないことも目に入るし、
聞きたくないことも耳にしてしまう。
互いの元恋人がいると特にそう。
自分の目で見た彼だけを信じようと思うのに。
「さっきの人達は、わざと当て擦りを聞かせに来たんだと思う。
これからも同じことがあるかもしれないけどスルーしてくれる?
…私は平気だから」
「何であいつのせいで先輩が嫌な思いしなきゃならないんですか」
もうこれ以上戸川君の悪口を聞きたくなくて、仕方なく矛先を変えた。
「…違うの。
元の原因は戸川君じゃなくて、
崎田さんなの」
「え?崎田さんて…」
突然の意外な名前に、三浦君は首を傾げた。
「実はね、この間別れた彼って、
法務にいた崎田さんなの。
原因は彼の浮気というか二股ね。
戸川君は私を庇ってくれただけ。
さっきのうちの一人が崎田さんの相手よ」
「……最悪じゃないですか」
そうボソリと言うと、
三浦君は黙ってしまった。
「そういう訳だから、そっとしといて。
ごめんね。こんなことで迷惑かけて」
ごまかしてごめんね。
私が本当に傷ついたのは、
崎田さんのことじゃないの。
力ない作り笑いを三浦君に投げて、そのまま黙って仕事に戻った。
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