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それからは社食を避けたこともあって、変わらない毎日が続いた。
戸川君とはメールでのやり取りはあったけれど、お互いに忙しくて、なかなか都合が合わずにいる。
彼女達の当て擦りは無意識に私の心にダメージを与え続けていて、彼と会うのを躊躇わせていたのかもしれない。
今日は金曜。
慌ただしく仕事を終えた後、家に持ち帰れる作業は週末にしようと、少し早めに帰宅した。
まだ夏の暑さが残る季節。
とりあえずシャワーを浴びてさっぱりした。
タオルで髪を拭きながらリビングに戻ると、テーブルの上の携帯が着信を知らせている。
相手も見ず、慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし」
『お疲れ。
今日は仕事終わりそうか?』
戸川君だった。
何度電話で話しても、受話器越しの彼の声に私の心臓が慣れることはなくて、バスタオルの胸元をぎゅっと握る。
「…あ、持ち帰りにしちゃって、
さっき家に帰ってきたの」
『なんだ。じゃ、今日行くな?』
「えっ?うん…」
私、今とても外に出られるような格好じやない。
『お前の分、買ってってやるよ。
じゃな、着いたら電話するから後で』
そのままプツリと通話は切れた。
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