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「崎田さんが不安にさせてるからでしょう?
自分でケジメをつけなかったり、
今でもこうしてここに来たり。
彼女を安心させてあげるべきなんじゃない?」
「……その顔だよ」
「え?」
「紗衣はいつだって、
冷静な顔で正しいことを言う。
今だって、浮気されても他人事みたいに」
崎田さんの口から出た言葉に、
私の思考が止まった。
「怒ることも泣くことも、甘えることも嫉妬することもない。
感情がないんだよ、僕に対して。
いつも壁があった」
彼の言葉は心に刺さった。
過去の恋人達にも、
同じようなことを言われてきた。
「…本当に僕を好きだった?」
「まさか、それも疑うの?」
その時、テーブルの上の携帯が鳴った。
崎田さんの視線がテーブルの上に向けられるのを見て、私は咄嗟に飛び付くようにして携帯を掴んだ。
着信画面を見られたら、
戸川君だとばれてしまうから。
「そんなに必死にならなくても分かってるよ。
…戸川でしょ?」
「……」
「出れば?」
崎田さんの前で出る訳にもいかず、
鳴り続ける携帯を握り締めた。
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