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「あいつ、
元カノと切れてないの知ってる？」
手の中で携帯が鳴り止んだ。
戸川君に会えるはずの時間が今、
最悪な形で壊れていく。
「…戸川のためなら、
そんな顔ができるんだ？」
「私にどうして欲しいの？
そんなに私がつまらなかったなら、結婚なんて言いださなきゃ良かったじゃない！」
苛々して叫んだ。
崎田さんに感情を剥き出しにしたのは初めてかもしれない。
「戸川が絡むと紗衣は変わるね。
…僕のためにそんな顔をして欲しかった」
崎田さんがポツリと言った。
「海事に移って、
小野寺唯が近づいてきて。
紗衣と違って僕一色なところが新鮮だった」
また携帯が鳴り始めた。
今出たらきっと、崎田さんと一緒にいることが知られるだろう。
「低レベルなのは承知だよ。
でも他の女の存在がちらつけば紗衣も変わるかもって期待もあった」
鳴り続ける携帯を握り締めながら、
こんな時にも私は戸川君を思う。
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