嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「あの鉢合わせの時ですら、 紗衣は冷静だったよね。 無反応に、背中を向けて」 「…あの後泣いたよ、たくさん。 苦しくて、寂しかった…」 あの夜の苦みを思い出して、 目に涙が滲んだ。 それでも戸川君と出会えたあの夜は、今では大切な出会いの夜。 「私に感情がないだなんて、追いかけもしなかった崎田さんが知らないだけだよ」 携帯が鳴り止んだ。 …戸川君が帰ってしまう。 心の隅がチリチリと焦る。 でも今は過去と対峙しなきゃならない。 「戸川が配属されて顔を合わせた時、頭に血が上った。 僕達の二年間は、戸川が留学でいなかった二年間と重なってるから」 崎田さんは私から目を逸らして、 自嘲気味に言った。
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