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「紗衣がいつも僕に冷静だったのは、あいつのことがずっと好きだったからだと思った。
裏切られたのは僕の方だったと」
「違うよ。戸川君と初めて会ったのは、あの鉢合わせの夜だから」
嘘をついて傷つけることもできた。
でも、できなかった。
私達の二年間は実ることはなかったけれど、そこに本当の気持ちがなかった訳じゃない。
「崎田さんとの二年間、
私なりに真剣だった。
ずっと続いていくんだと信じてたよ…あの頃は」
“あの頃は”に込めた意味を理解したんだろう。
崎田さんは寂しそうに笑った。
「その言葉が聞けたから、もういいよ。
……色々、ごめん。
別れる羽目に追い込まれて、
戸川も現れて、後悔ばかりだった」
崎田さんは最後に私の涙を切なそうに見つめてから、ゆっくりと玄関に向かった。
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