嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「でも、紗衣は自分では気付いてないかもしれないけど。 分かるんだよ、僕じゃ足りないって」 靴を履きドアに手をかけた崎田さんは、振り向かず背中越しに静かな声で言った。 「いつも求めた分しか返ってこなかったよ。 ……抱いてる時ですらね」 何か言おうとしたけれど、 うまく声が出せなくて。 一瞬の間の後、 バタンとドアは閉まった。 肩から力が抜ける。 と同時に、後悔なのか虚しさなのか、それとも悲しみなのか分からない感情の波が押し寄せてきた。 恋愛は、どちらか片方ばかりが悪いなんてことはないんだと思う。 鏡のようにお互いを映し合って関係は作られるものだから。 一度はずっと一緒にいると心に決めた人だから、泥沼になっても憎みきれなかった。 これで本当のお別れだと思うと切なくて胸が痛かった。 ……さようなら。 崎田さんが出ていったドアに、 そっと呟いた。
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