嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「……戸川君…?」 息を切らしながら一気に走ってきた公園は人影はなくて、ただ無人のベンチだけがオレンジ色の街灯に照らされていた。 「いないの……?」 仕方なく電話する。 どこにいるんだろう。 “電源が入っていないか、電波の届かないところに…” 無機質な音声案内に途方に暮れる。 どうして? さっきの着信は戸川君だったのに。 諦めて家に向かってとぼとぼ歩きだしたものの、ふと私は向きを変えた。 …行ってみよう。 戸川君のマンションに。 いいよね? 電話が繋がらないんだから。 一度心を決めるともう迷いは消えて、先へ先へと歩を進めた。 慣れた駅までの道も、緊張しながら辿る今日は景色が違って見える。 駅の高架を越えてほどなくして、 彼のマンションに着いた。 「えーと…203号室…」 表札のかかっていないドア。 廊下に面した小窓は真っ暗で、 家に居るのかよく分からない。 思い切ってベルを鳴らす。 ……応答はない。 しばらく待ってもう一度鳴らしても、やっぱり応答はなかった。
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