嫉妬と煽情と初めての夜#1

26/38

5715人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
何度も押すのはしつこい気がして、もうそれ以上は押せなかった。 でも、せっかく会いたくてここまで来た気持ちが宙ぶらりんのままで、すぐ帰る気にもなれなかった。 ドアの前に佇んだまま、 どうしようかと途方に暮れた、 その時。 「……はい」 低い声と共にドアが開いた。 「……あ!戸川く…」 諦めていた彼が居たことに驚いて、俯いていた私は嬉しくて笑顔で顔をあげたけれど。 私を見下ろす彼の目の冷ややかさに、凍り付いて動けなくなった。 「……なに?」 シャワーを浴びていたらしく、 濡れた髪をタオルで拭きながら、 無表情の戸川君がたった一言、口を開いた。 “なに?”って…なんで? こんなに冷たい表情は見たことがない。 いつもの笑顔を期待していた私は すぐに言葉を繋げなかった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5715人が本棚に入れています
本棚に追加