5715人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
何度も押すのはしつこい気がして、もうそれ以上は押せなかった。
でも、せっかく会いたくてここまで来た気持ちが宙ぶらりんのままで、すぐ帰る気にもなれなかった。
ドアの前に佇んだまま、
どうしようかと途方に暮れた、
その時。
「……はい」
低い声と共にドアが開いた。
「……あ!戸川く…」
諦めていた彼が居たことに驚いて、俯いていた私は嬉しくて笑顔で顔をあげたけれど。
私を見下ろす彼の目の冷ややかさに、凍り付いて動けなくなった。
「……なに?」
シャワーを浴びていたらしく、
濡れた髪をタオルで拭きながら、
無表情の戸川君がたった一言、口を開いた。
“なに?”って…なんで?
こんなに冷たい表情は見たことがない。
いつもの笑顔を期待していた私は
すぐに言葉を繋げなかった。
最初のコメントを投稿しよう!