嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「…用がないなら閉めるぞ」 「待って!」 間も置かず閉まりかけたドアを慌てて掴んだ。 これじゃさっきの崎田さんと逆だ。 「あの、さっき電話とれなくてごめん」 「…ああ。それだけ?」 その時、すみません、と小さい声がして振り向くと、年配のご夫婦が済まなさそうに後ろに立っていた。 私のせいで通路が塞がっていたらしい。 ごめんなさいと頭を下げて、 通路を空ける。 それでも片手はドアを放さずに。 放したら閉じられて、 絶対にもう開けてくれない気がしたから。 小一時間前の電話では普通だったのに、なんでこんなになっちゃったんだろう。 「……入れよ」 何を言えばいいのか必死で頭を巡らせるばかりで無言の私に、面倒臭そうにため息をつきながら戸川君が言った。
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