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「…用がないなら閉めるぞ」
「待って!」
間も置かず閉まりかけたドアを慌てて掴んだ。
これじゃさっきの崎田さんと逆だ。
「あの、さっき電話とれなくてごめん」
「…ああ。それだけ?」
その時、すみません、と小さい声がして振り向くと、年配のご夫婦が済まなさそうに後ろに立っていた。
私のせいで通路が塞がっていたらしい。
ごめんなさいと頭を下げて、
通路を空ける。
それでも片手はドアを放さずに。
放したら閉じられて、
絶対にもう開けてくれない気がしたから。
小一時間前の電話では普通だったのに、なんでこんなになっちゃったんだろう。
「……入れよ」
何を言えばいいのか必死で頭を巡らせるばかりで無言の私に、面倒臭そうにため息をつきながら戸川君が言った。
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