嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「おじゃまします…」 戸川君が支えるドアの隙間から 恐る恐る身体を滑り込ませると、 背後で扉がバタンと大きな音を立てた。 シャワーを終えたばかりなのか、石けんの香りと湯気が玄関にも漂っていた。 戸川君は黙ったまま、それ以上の進入を阻むかのように私を見下ろした。 普段より数倍増しの威圧感に、 私は俯いて縮こまった。 「……で、何の用?」 凍りつくような冷たい声音。 「あの…公園に行ったけど、 戸川君いなかったから…」 「…悪い。気が変わった」 そう言い捨てると、戸川君は廊下の数歩先の洗面所らしき部屋に入ってしまった。 その引き締まった背中を見て初めて気付く。 大きなバスタオルを肩にかけていたから気付かなかったけど、戸川君は上半身裸だった。 でも赤面してる余裕なんかなかった。 彼の変化の理由が何なのか、 必死で記憶をたどる。 もしかして…崎田さん? 道でばったり会ったとか? それだけでこんなに? 「あの…戸川君?」 Tシャツを着て洗面所から出てきた戸川君は、黙って奥へ向かった。 仕方なく、 私も靴を脱いで奥へと進んだ。
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