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「あくまでも憶測だけどね」
麻紀は真面目な顔で考え込んでから言った。
「戸川君にしてみたらさ。
良かれと思って強引に出たけど、
紗衣が泣いてるの気付いちゃった訳でしょ。
後悔とかあるんじゃない?
やりすぎた、みたいな」
「じゃあ、その罪ほろぼしに優しくしてるってこと?」
「ていうより、いくら演技だとしても、キスした後に泣かれたらショックじゃん」
「それが嫌で泣いた訳じゃないんだけど」
「戸川君からみたら、
そんなこと分からないじゃん。
崎田さんへの未練の涙か、とか。
いずれにしても、
いい方には受け取れないよ」
「確かに。でも仕方ないよね…」
私が考え込んでいると、
麻紀は急に楽しそうな顔になった。
「なんか、面白くなってきたね!
あの戸川君も人間だったんだ」
「そう言うけど。
戸川君って麻紀が言ってたみたいな冷たい感じ、全然ないよ。
どっちかって言うと優しい方じゃないかと…」
麻紀のニヤニヤ笑いが大きくなってきたので途中で止めた。
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