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「あいつの腹いせか。…ごめん」
「…戸川君が悪いんじゃないよ」
でも、自分がそんな女に見られていたと思うと意気消沈した。
これではとても告白なんてできない。
気まずい沈黙が広がった。
「…今日は帰るね」
「待てよ。…悪かった」
また玄関へ向きを変えた私の腕を再び戸川君が掴んで止めた。
「…悪かった。帰るなよ」
もう一度繰り返した戸川君の声が少し擦れた。
その声に胸がぎゅっと痛くなる。
「私も、ごめん…」
「何がだよ」
「…嫌な思いさせて」
互いに謝ると何だかくすぐったくなって、その場の空気が和らいだ。
少し俯き加減に振り向くと、戸川君はそのまま私の腕を引いてリビングのソファーに座らせた。
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