嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「私…戸川君には特別な人がいるんだって知っても、き、気持ちが…後戻りできなくて」 口がもつれて、 言葉も上手に繋げない。 「他の人のことを好きなのは嫌で…、私が一番近くにいたいって思った」 もう私の気持ちなんてこれ以上言わなくても透け透けなのに、戸川君は何も言わずにいる。 「最後まで言わなきゃいけないの…?」 「言って」 まだ完全にひいていなかった涙が また一筋こぼれた。 「あの時の、 崎田さんへの当て付けの、 キ…キスだって、悲しかった」 好きと言うはずが、言葉はもどかしくその周りをウロウロする。 「戸川君にはただの演技なんだって思ったら、悲しかった…」 戸川君の手が頬を包んで、 親指でそっと涙を拭った。 それが余計に新しい涙を誘う。 「優しくされたら、余計に、 ほ、本物が欲しくなった。 …あれはただの、演技なのに、」 「演技じゃない」 顔を傾けて近づく戸川君の息が私の唇にかかる。 「……演技じゃない」 低く繰り返された言葉は私の唇とのわずかな隙間に流し込まれて、 ぐっと私を引き寄せた戸川君が、 私の唇を優しく塞いだ。
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