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「いやいや、大学時代だって。
でも、戸川君を追い掛けてうちに入社したらしいよ。
父親のコネ使って」
「それじゃ今も?」
「戸川君の方はまったく相手にしてないらしいんだけど、彼女は吹聴して歩いてるらしいよ。
私は特別な存在なんだって」
「ややこしい人がくっついてるんだね…」
でも、元カノともなれば脅威に感じられる。
過去であっても、一度は戸川君が好きになった人だから。
「嫌なついでだけどさ…」
すっかり意気消沈した私に、
麻紀が言いにくそうに付け足した。
「その子、海事らしいんだよね」
「ああ、地の利でも負けてる…」
地の利で言うなら、隔絶されてる経企室なんて一番不利だ。
「弱気になっちゃ駄目だよ紗衣!
幸い、戸川君のアシスタントじゃないって。
海外管理部らしいよ」
「管理部も侮れないよ。
個人データ把握できるから。
…どんな感じの子なんだろう」
戸川君の好みを知りたくもある。
会ったこともない元カノに、羨ましさと嫉ましさが入り混じる。
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