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「顔とか名前までは知らないんだよね。
今度うちの部の戸川君の追っかけやってる子に聞いとくよ」
「追っかけ?」
ああその子は大丈夫、
と麻紀は笑って手を振った。
「芸能記者的追っかけだからね。
とにかく今、戸川君に一番近いのは紗衣じゃないのかな?」
「近くて遠い感じだけどね…」
公園での仕事ばかりの色気のない会話を思い浮かべる。
一度、同僚とか戦友とかに落ち着いてしまったら、そこから壁を越えるのは難しい。
「あ、そうだ。
戸川君が唯一気を許してたのは新入社員時代の指導役の人だって。
亀岡さん、有名だけど知ってる?」
「知ってる!入社案内のパンフレットに載ってた人だよね?
すごく知的で綺麗な人。
あの人には絶対適わないって感じだよね」
「今の入社案内は紗衣が載ってるじゃん」
友達として鼻高々だよと、
麻紀が得意気に笑った。
「だけど、亀岡さんは特別な関係じゃないから大丈夫だよ」
「そうなの?」
「亀岡さんはね、当時、海事の王子の恋人だったから」
あ…海事の王子って。
今度帰国して経企室に来る人?
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