嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「顔とか名前までは知らないんだよね。 今度うちの部の戸川君の追っかけやってる子に聞いとくよ」 「追っかけ?」 ああその子は大丈夫、 と麻紀は笑って手を振った。 「芸能記者的追っかけだからね。 とにかく今、戸川君に一番近いのは紗衣じゃないのかな?」 「近くて遠い感じだけどね…」 公園での仕事ばかりの色気のない会話を思い浮かべる。 一度、同僚とか戦友とかに落ち着いてしまったら、そこから壁を越えるのは難しい。 「あ、そうだ。 戸川君が唯一気を許してたのは新入社員時代の指導役の人だって。 亀岡さん、有名だけど知ってる?」 「知ってる!入社案内のパンフレットに載ってた人だよね? すごく知的で綺麗な人。 あの人には絶対適わないって感じだよね」 「今の入社案内は紗衣が載ってるじゃん」 友達として鼻高々だよと、 麻紀が得意気に笑った。 「だけど、亀岡さんは特別な関係じゃないから大丈夫だよ」 「そうなの?」 「亀岡さんはね、当時、海事の王子の恋人だったから」 あ…海事の王子って。 今度帰国して経企室に来る人?
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