嫉妬と煽情と初めての夜#1

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「ついてこいって言われたら、 紗衣は仕事辞めて行っちゃう?」 「うーん…。難しいね」 「つか、待って。 付き合ってから心配しろって話だわ」 先走りすぎた自分達に爆笑した。 「どっちにしてもその元カノも戸川君を狙ってるはずだから、早くなんとかしなよ」 早くって言われても、どうしたらいいのか分からないのが今の状況だ。 「でも、いきなり告白できる? 出会ってから早すぎるし、 仕事の話ばっかで雰囲気ないし」 「夜の公園で二人きりなら十分じゃん? 告らなくてもさ、好意を匂わせるのよ」 「に、匂わせる…?」 「困ったらもう“好き”でいいじゃん。 ドカンと行け!」 興奮するとやたらに声が大きくなる麻紀のせいで、店員さんの視線が痛い。 「うん。頑張る…けど、噂の冷凍ビームで死ぬかもしれない」 「“彼は優しい”んでしょ? 大丈夫、振られても死なないよ」 この調子で散々背中を叩かれて、この日は帰った。 麻紀の勢いに乗せられ、アクションを起こす気になったものの。 私の気持ちを削ぐような微妙な出来事があるのもまた、社内恋愛の常だ。
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