繋いだ手、広がる距離

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「すごいじゃん紗衣! 戸川君を落とした唯一の女だよ!」 金曜日のティールーム。 相変わらず麻紀は声が大きい。 「いや…落としたっていうか…。 そう言っていいのかな。 付き合おうって言葉なかったけど、付き合ってるのかな」 「何をぐちゃぐちゃ言ってんの! 付き合ってんだよ、それは」 戸川君とはお互い忙しい身なのでマメな連絡こそ取り合わないものの、あれから土日は一緒に過ごしている。 「だよね…へへ…」 「お願いだから、戸川って名前言う度に頬染めないでよ! 見てる方が恥ずかしい」 「ごめん」 慌てて弛んだ顔を手で押さえる。 「紗衣がそんなにメロメロになってるの、初めて見たよ。 崎田の時なんか、プロポーズされても業務報告するがごとき態度だったもんね」 「そうだっけ?」 …覚えてない。 女の恋は上書きって、よく言ったものだ。
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