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週明けの月曜日の朝。
帰国後初めての正式な出社日だ。
仮入居の男子寮の食堂でコーヒーを飲みながら新聞に目を通していたら、突如新聞の向こう側でガタン、と椅子を引く派手な音がした。
チラリと目を上げると、見覚えのある男が俺を睨みつけている。
……ああ。
彼女の後輩の男だ。
名前は忘れたけど。
「は、…話があります」
突っ掛かるような空気に、
黙って新聞から顔を上げた。
「成瀬先輩に、
ちょっかい出さないで下さい」
いきなり何だ。
改めてまじまじと奴を眺めた。
背は普通。顔は、まあまあ。
「…彼女はちょっかい出されるような馬鹿じゃないと思うけど」
「と、とにかく、あんたみたいなのには先輩に近づかな…」
「目上に向かって“あんた”はないだろ」
言い返しながら、
三日前の彼女の泣き顔を思う。
ちょっかい出した訳じゃないけど
傷つけた俺は正直、耳が痛い。
「ごまかさないでくださいっ」
「礼儀も守らないで先走るのを改めろって言ってんの」
「僕は先輩をずっと見てきたんです」
「…へえ」
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