幸せになる義務

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その夜、麻紀に呼ばれて、麻紀達が泊まるスイートルームにお邪魔した。 谷本君は久々の営業メンバーと少し飲んでくるという。 「もう一緒に暮らしてるのに、今さらスイートで初夜ってのもね」 “初夜”の響きに二人で照れて爆笑した後、麻紀が切り出した。 「ね、紗衣。戸川君とはどうなってるの?」 麻紀には12月に相談して以来、戸川君のことは一切話していなかった。 結婚準備と転勤と引っ越しで大変そうだったし。 何より、大きな苦しみが限界を越えると、人は相談する余裕すら無くすものらしい。 「……別れたの。一月に」 私の言葉に麻紀は驚かなかった。 だいたいの察しはついていたんだろう。 三ヶ月以上経った今はもう感情を抑えることにも慣れて、私は何があったかを淡々と説明した。
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