幸せになる義務

32/38
4070人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
翌週は麻紀の結婚式に出席した。 真っ白なドレス姿の麻紀は 本当に綺麗で幸せそうだった。 教会の出口でなぜか麻紀はブーケトスをせず、女子からは不満の声もあがったけれど、郊外のレストランでの披露宴は大いに盛り上がった。 同じ職場のカップルだから、出席者は国内営業の面々ばかりで少し心細かったけれど。 谷本君はラグビーをやっていたという経歴通りの立派な体格で、痩せ型好きな麻紀の好みとは確かに違うので内心可笑しかった。 でも彼が麻紀に向ける視線は本当に優しくて、見ていると胸が熱くなった。 出席者を見渡しながらふと思う。 谷本君と同期の戸川君も、日本にいたら出席するはずだった。 彼が発ってもうすぐ4ヶ月。 私は何を、いつまで待ってるんだろう? いつか帰ってくると信じて待つと決めた彼には、今は他の人がいると知ってしまった。 現実から何度も目を逸らし、 心を奮い立たせても、 思い知るのは独りぼっちの自分。 幸せそうな麻紀の眩しい姿が遠く感じられて、どんどん孤独になっていく自分の未来を思わずにいられなかった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!