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薄紙を開くと、白いバラに鈴蘭の可愛らしいブーケだった。
「麻紀、これ…」
その花束を見つめたまま、
胸が詰まって言葉が出てこなかった。
今の私にとって
“幸せ”はあまりに遠くて。
「ね、紗衣」
麻紀が話し始めた。
「これから紗衣がどう決めようと、あたしは絶対に味方だからね」
黙って耳を傾けた。
「でもね。他の人…片桐さんに心を向けることも考えてみて欲しい。
あんなに素敵な人、いないよ」
「うん……」
「戸川君とうまくいって欲しかったよ。
でも今は正直、あたしは戸川君の肩を持ちきれない」
麻紀は申し訳なさそうに言葉を切った。
「…そうだよね」
普通なら諦めるよね。
でも心のどこかで、
私はあれが何かの間違いだと信じてしまう。
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