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「あんまり、いじめないでくださいよ。一応まだ、付き合いたてなんで」
困ったな、とでも言うかのような表情を浮かべる長瀬だ。
相変わらず、完璧な“外面”の仮面をかぶったままで、私の手をそっと引く。
「ちょっと、借りていきますね。そろそろ昼ですし」
長瀬の登場で、少しだけ冷静になったらしい。
掴み掛かるんじゃないかってくらいに興奮していた二人が、穏やかになった。
「あら、本当ね。ごめんね羽村さん、引き止めて」
「い、いいえ。大丈夫です」
頭を振った私は、資料を手に、長瀬に促されるままその場を離れた。
後ろで、落ち着きを取り戻した二人が会話を続けている。
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