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一つの世界に一つの宝珠。
四つの世界に四つの宝珠。
四柱の女神さまが一つずつ世界を創り、世界の平和と安寧と、たくさんの願いを込めて世界を守るために宝珠を創った。
最初は女神さまの心に応えようと、生きるもの全てで世界を良くしようと働きかけた。
しばらくして世界が平和に落ち着くと、だんだんと女神さまへの畏敬の念を忘れていった。
それからさらに時が経つと、生きとし生ける者たちは、欲を持って害をなすことを覚えた。
四柱の神様はそれらを余すところなく見つめていた。
四柱の長女は思う。生きとし生ける者たちには、この世界にはまだ希望があると。
四柱の次女は思う。永い時の中で、どれだけ待とうとも、何一つ変わることはなかったと。
四柱の三女は思う。過ちを犯すのなら、それを何度だって正していこうと。
四柱の四女は思う。生ける者らがどれだけの罪を負おうとも、こんなにも豊かに自然は満ちるのだと。
そうして一柱の女神がついに世界を見限った。
自分が愛し、慈しみ、大切に育てていた世界が、醜く汚れ壊れていくことが、その女神には耐えられなかったのだ。
『この世界を形取り、守っているのはこの宝珠。これさえ無くなれば……』
そう思った女神は宝珠を大きく振りかぶり……壊すことが出来なかった。
自分が生み出した“世界”そのものは、憎むことができなかったのだ。
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