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さっき、カラオケで トイレに行った時、 余計なことかなと思いつつ、 わたしは田辺くんに 電話をかけていた。 彩加の様子を聞いた田辺くんは、 わたし達の居場所を確認すると、 今すぐに行くと言って 電話を切ってしまった。 すれ違いになったら どうしようと心配していたけれど、 こうして会えて、 わたしはほっとしていた。 その時ちょうど、 轟音とともに、 わたしの乗る電車が ホームに入って来た。 「じゃ、わたし、行くね。 また明日ね、彩加」 彩加の背中をぽこ、と叩いて、 わたしは乗車口に向かった。 開いたドアの中に 足を踏み入れ、振り返る。 広い背中の向こうに、 まだ戸惑いながらも、 嬉しそうに田辺くんを 見上げる彩加の顔があった。 プシュ、という音を立て、 扉が閉まる。 二人をその場に置いて 動きだした電車の中から、 田辺くんが彩加の身体を引き寄せ、 ぎゅっと抱きしめる姿が ちらりと見えた。
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