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支度が終わると果歩とマンションを出た。
売れっ子デザイナーは結構忙しそうだ。隅に置かれた果歩のMacには電源が入り、周りには資料が散らばっていた。
私たちは朝食を兼ねた遅いランチに出て、そのまま駅に向かった。
駅の構内で、改札口まで果歩が送ってくれて、私は手を振りながらエスカレーターを降りた。
ホームで新幹線が来るのを待って、風のように滑り込むそれに乗り込む。
運よく2列のシートの窓際に座ることができ、新幹線は静かな音とともに出発した。
私は携帯を取り出した。
『無事に乗れた。いろいろありがと。仕事、頑張って』
先に果歩にメールを送った。
その後、直人くんにも送ろうと思っていると、そのタイミングで携帯が震える。
果歩からの返信かと思ったけれど、
メールの送り主は直人くんだった。
『新幹線、止まんねえ?』
『止まってないよ(笑)』
私は笑った。
笑ったのに次の瞬間には幾重も涙を流したので、
隣のサラリーマンが困っていた。
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