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「だってお前が釜田に」
「八重子先輩?」
「諦めて、他の人探すって宣言したって」
「はい!?」
「海人が、萌優に紹介したいやつがいるんですって」
「へっ!?」
焦りすぎてピザを落としそうになったところを、補佐がキャッチしてくれた。
「しっかり食べろよ」
なんて意地悪そうに言われたけれど、私のせいじゃない! と思いながら、助けてもらった手前文句も言えず、話をする前に食べてしまおうと思って一気に食べて、水を飲んだ。
ちゃんと飲み込んでから、ふうと息を吐いて話を始めようと口を開いた。
「あの、さっきの話ですけど……」
けれど刻也さんの手が伸びてきて、私の口端を捉える。
キュッと摘むと何かを取って自分の口元に持っていった。
ペロッ
―――っ!?
「ケチャップついてるぞ。ったく、躾し甲斐があるな萌優は」
そう言ってクツクツ笑われた。
「し、し――!?」
いろいろ言いたいことが頭を巡るけど、恥ずかしくて言葉にならなくて、私は結局押し黙るしかない。
ふて腐れる私にまた笑って、刻也さんは二つ目に手を付けた。
あーもぉっ! ほんっと意地悪だよこの人!
8年前のトキ兄だったころの刻也さんを思い出しながら、私は目の前の人の昔を振り返った。
いや、昔だけじゃない。
よくよく考えてみたら、補佐じゃない時の彼はちょっと意地悪な気もしてきた。
ふて腐れながらポテトを摘まんで、じとっと刻也さんを睨むけれど、どこ吹く風って顔をして美味しそうに新しいピザを食べている。
うー、悔しい。
なんだか私っていいように転がされてる気がする。
「で、続きは?」
すっかり余裕の顔で尋ねられて、私は悔しさいっぱいで内緒にしておきたい気もしたけれど、今さら拗れたくなくて話を続けた。
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