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ふーっと緊張を解きながら、信じられない嘘をついてくれた二人に心の中で苦笑する。
一芝居なんて言っていたけれど、どう考えたってただの嘘つきだ。
それに二人の言うことが真実だとすれば、私はあまりにも軽々しい女になる。
補佐に告白して駄目だったから他の人にします! って私が言ったという話になっている。
無茶苦茶軽い、軽すぎる。
そんなお軽い気持ちで告白したわけはないのに、信じられていたことが地味ーにショックだったりする。
――もっと好きだってアピールすべきなのかな?
なんてこれ以上どうしたらいいんだろうっていっぱいいっぱいになっていたら、キッチンへピザの残りを片付けてくれていた刻也さんが、後ろから声を掛けてくれた。
「萌優、先入るだろ?」
主語も何もあったもんじゃない質問が飛んできて、私は首を傾げる。
先に入る、なんのこと?
「何がでしょうか!?」
「何って、風呂」
「へ、ふ、ふふ、風呂!?」
「入らないのか?」
この人は、一体何をおっしゃってるんだろうか?
もしかして、この家でお風呂に入れとでも言っているの?
――も、もしかして!!
お泊りセットはそのため?
本気でこの家に泊まればいいと思ってのこと!?
予測していなかった事態が起きて、パニックに陥る。
「いや、あの……冗談ですよね?」
顔を青くしたまま尋ねると、刻也さんはひょいと眉を上げて怪訝な表情を浮かべた。
「泊まりの準備、何のためにさせたと思ってるんだ?」
「……」
「……?」
私の沈黙に、刻也さんは不思議そうな顔をして首を傾げた。
――いやいやいや! 私の方が不思議すぎますから!
「あの……確認なんですが」
「あぁ」
「私が泊まることは決定なんでしょうか」
「問題あるか?」
――本気ですか?
と口にしかけて止めた。
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