結:結ぶ恋(続き)

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 「ちょっ、ほ、ほんとに! 私ほんと無理ですからっ。せめて一回にしてください!!」  混乱がピークを迎え彼に腕を掴まれた瞬間、私は自分でも想像もしていなかった提案を自らしていた。  「……あのな、萌優」  私の提案に思い切りため息を吐くと、彼は落ち込んだ表情で私を見つめた。  「あ、まさか」  けれどそれには一切気づかない私は、刻也さんが何か話をしようと口を開いたにも関わらず、私はあらぬことに気が付いて口から滑り出た。  「処女は嫌だとか、言いますか?」  「はぁっ!?」  刻也さんは眼鏡越しにも分かるほど目を見開き、そして素っ頓狂な声を上げた。  それでも私の話は止まらなかった。  「面倒だって、言いますよね……ごめんなさいっ」  勝手に話を終わらせて、私は落ち込んだ。  うっかりいろんなことを喋りすぎてしまった。  それで裏目に出るなんて最悪すぎる。  もう今すぐここから飛び出したい。  泣きそうになる目を、掴まれていない手でぐっと擦ると、手を掴まれた。  そして、目の前の人は心底疲れた顔をして私を見ている。  「頼むから、黙ってくれ萌優」  とてもゆっくりと、まるで子供に話しかけるかのような声音で私に語りかけながら、彼はそっと私の顔を持ち上げた。  「……あのな」  「は、はい」  この数分で、何度目になるかわからないため息を吐かれた。  それに少し落ち込む。  「お前の勘違いだから」  「はい……は?」  「だから、俺ヤルなんて言ってないだろ?」  「えっと、だって、あ、アレ?」  勘違いと言う言葉と『ヤルなんて言ってない』というフレーズが頭を巡る。  その言葉に赤面しつつ、私は言われた通りゆっくりと、数分前を脳内で再生した。  確か『お前のせいでたまってるんだ』と言って。  それから……『3つ付き合ってほしい』って言ったよね?  3つ……?  んー?
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