結:結ぶ恋(続き)

23/40
前へ
/40ページ
次へ
 「ん?」  まだ耳元から離れない彼の唇に、ドキドキが止まらない。  時々耳たぶにかする柔らかなそれを、私は何度も唇を触れ合わせてどんなものか知っている。  知っているからこそ、余計に恥ずかしくて堪らなくなった。  「いつか、じゃ。ダメですか?」  ぎゅっと目を瞑って、でもしっかりと言い切ると、刻也さんは私から少し離れて身体を折った。  「ククッ。ははっ」  笑い始めた彼は、そのまま私の足元にしゃがみこんで大笑いをし始める。  「ときなり、さん?」  「はははっ、ごめっ、悪い……ククッ」  突然笑い始めた彼について行けず戸惑って、私も彼と同じ目線まで下がる。  笑い過ぎて涙が出たのか、眦をメガネを押し上げて拭きながら、しばらくしてからやっと顔を上げてくれた。  「悪い。あのな、萌優」  「ハイ……」  「そういう可愛いことは言うな」  「?」  「あー、もうっ!」  「わっっ」  私は頭を引き寄せられて、刻也さんの胸元へダイブした。  すっぽりと収まると、嬉しいけどやっぱり恥ずかしさにドキドキする。  「すぐに押し倒したくなるって言ってるんだ」  「え……っ!?」  「だから、言うなよ。もう」  「は、い」  「それと」  一呼吸おいて、私をぐっと引き寄せる腕。  苦しいほどに抱き寄せられて、ドキドキがまた加速する。  「――処女が悪いなんてことは全くないから」  「ひゃっ、あ、そ、それは忘れて……」  「無理」  「いやもう、ほんとに」  「駄目。俺のだから、全部」  お、俺、俺の……!?
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

330人が本棚に入れています
本棚に追加