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パニックになりながらも、その言葉の嬉しさは胸の内を侵食していく。
胸元についた手がぎゅっと刻也さんのシャツを握る。
傍に居ればいるほど、止まらない想いがこみ上げてくる気がした。
この人はこの短時間に、どれほど私を喜ばせる気なんだろうって思ってしまう。
「あの、刻也さん」
「ん?」
「大好き、です」
何を言っていいのか分からなくて大好きだと告げると、ゆっくり近づいた唇がそっと触れるだけのキスを落としてくれた。
その後、刻也さんに開放された私は、有無を言わさず風呂へ放り込まれた。
逃げる余地も与えてもらえずに入れられたお風呂の中で、心中わーわー騒ぐ。
だって、まさか補佐の家でお風呂に入る日が来ようとは、だよね?
お風呂の後、恥ずかしさ全開で持ってきたスエットとTシャツに着替えて……ブラジャーをしっかりつけた。
――よしっ
気合を入れて脱衣場を出て、晒したことのないすっぴんを公開するに至り、顔を隠してリビングへ向かう。
それなのに、そんな私に刻也さんが言った一言が
「今さらだろ」
なんだから、泣けてくる。
「8年前にすでに見てる」
おいおいおい!! 私は中学生から同じ扱いですか!?
続いた刻也さんの言葉に若干凹んだけれど……
「絶対可愛いから、自信持て」
なんて褒め殺しの言葉をもらえば、にやけながらすっぴんを晒すしかない。
「じゃあ俺も入ってくるわ」
私に一声かけてリビングを出ていく刻也さんを見ながら、うわーうわーって胸がいっぱいになった。
その言葉の裏には、待ってろよっていう意味が含まれている気がする。
そう思えば、勝手に頬が上がってまたにやけるのが止められない。
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