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また私は刻也さんのベッドに寝かされていて、体中から彼の匂いがして眩暈がする。
「あれ……!?」
3本目を観終わったとこの記憶はあるのに、その後が思い出せない。
あれれ? と首を傾げると
「起きたか?」
私に呼びかける大好きな人の声が部屋の入り口から聞こえた。
「おはよう、ございますっ」
寝起きの緊張で声が裏返る。
それを聞いてくすくすと笑われて、少し顔が赤くなった。
―――恥ずかしいっ!
前に朝を迎えたときは、彼の体調や話のことが気になってそれどころじゃなかった。
だけど今日は前とは全然違ってて、私の大好きな人が、私のことを好きだと言ってくれた翌朝なんだ。
嘘でも夢でもなく、刻也さんが柔らかく微笑んで朝から私を見てくれている今が、全部本当なんだって思わせてくれるから、それがもう嬉しくて私をソワソワさせる。
駄目だ、もう昨日から嬉しくて全身がそわそわしてばかりだ。
「着替えて、外に出る準備できるか?」
「はいっ、30分も頂ければ」
「今日は飯行こう」
「はい!」
喜びを露わに勢いよく返事をすると、これ以上ないくらい優しい笑みを返された。
急いで準備をした後、連れてこられたのは近くにあるベーグルショップだった。
注文したサーモンマリネの挟まれたベーグルが届いて、目が輝く。
「お、美味しそうー!」
「良かった。俺パン好きなんだ」
「そうなんですか? 意外です」
「そか? さ、食べるか」
「頂きまーす」
にんまりして手を合わせて、ベーグルに手を出した。
そう言えば、外で食事をするのは2回目だな……とふと思い至る。
初めては……あの回転寿司。
――刻也さん、いきなり私の手ごとスプーン持ってケーキ食べるからビックリしたなぁ。
なんて思い出して、ふふっと笑い声が出てしまう。
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