結:結ぶ恋(続き)

29/40
328人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
 食べ終わって店を出ると、手が差し出された。  「萌優、手」  「あ、はいっ」  ここに来るときは慌てて、そんなことに意識がなかったんだけど。  一緒に隣を歩くって、すごく嬉しくて、恥ずかしくて、こそばゆいけど。  結局のところ幸せだなって思う。  差し出された左手をきゅっと握りしめると、一度離されて指を絡められた。  ――うわぁっ。こ、こんなつなぎ方してもらっていいのかな!?  ドキドキし過ぎて、キャーって叫びそうになるのを抑えて、繋がった手を見つめた。  へへっ。嬉しい……  刻也さんにはなんてことないのかもしれないけれど、包む手が大きくて私の手なんてすっぽり収まる。  それが心地よくて、歩きながらちらちら手を見つめた。  そして、離さないでねって何度も願いを込めながら握りしめた。  「さっきの話な。来週の土曜に、お祝いしようって。俺と、お前が……付き合った祝い」  恥ずかしそうに最後の言葉を付け加えて、彼は私の手を引いた。  「へ……!?」  「やっぱり。お前気が付いてないと思った」  「あの、だって。えぇえ!?」  混乱に陥る私を余所に、ぐいぐい私を引っ張って歩く刻也さん。  混乱から抜け出せないままに私は、気が付けば彼の家まで帰ってきていた。  手を繋がれたまま家に入り、廊下も一息に通り抜けるとソファーに座らされる。  「あのっ、質問! なんですけど……」  「なんだ?」  「お、怒らないでくださいね?」  「……?」  私の前置きに首を傾げつつも、静かに頷いてくれた。  それを見て私は、躊躇いつつもゆっくりと言葉を選ぶ。  「あの、私って刻也さんの……彼女です、って言ってもいいん、ですか?」  私の問いを聞いた刻也さんは目を見開いて固まると、そのままオーバーリアクション気味にソファーに倒れこんだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!