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午後からの会議にお茶出しをしなくてはと慌てて準備をする。
珍しく今日は、いつも別行動の主任が私と共にお茶出しをしてくれたので、準備をしながらだけど久しぶりに話が出来た。
「いつも悪いな江藤」
「いえいえっ。私に出来ることなんてまだまだで」
「いや、よくやってるよ。ほんとなら俺とか係長のやることも頑張ってくれてるし」
「ホントですか? ちゃんと出来てるといいんですけど」
褒められるのはやっぱり嬉しい。
自分では一生懸命なつもりでも空回りしていないかとついつい不安だけれど……正面切って褒められるのは照れる。
「会議室のセッティングも悪かったな」
そう言われて、苦笑いしそうになる。
だってあれ、補佐の我がままだろうし。
その表情を見られないようにするのに、気をまわしてしまうくらいだ。
「いえいえ。大したことなかったので」
適当に誤魔化したけど、大丈夫だろうか。
恥ずかしいから補佐の話は止めたいのに、私の意向を無視して主任はまだ続ける。
「いやー補佐ってさ、ほんと色々してくれるから凄いよね。下にやらしときゃいいこととかも、しっかり見てるだろ?」
「そう、ですね」
「ああいう、全体のことに理解と興味を持って頑張ってくれる人がさ、上になっていって欲しいよなー」
補佐と聞くだけでドキドキしながら相槌を打っていた私。
そんな中で『上になっていって欲しい』なんて言われたから、じわじわと熱いものがこみ上げてきた。
「そうですよねっ」
補佐を認めない人もいるかもしれない。
でも分かってくれてる人もいるんだと思って、自分のことでもないのに嬉しくて素直に喜んでしまった。
ふふっと笑っていると「お前ほんと補佐が好きだよなー」って笑われてしまって、顔を赤くした。
「え、いや、好きって、その」
「あははっ、大丈夫だって。変な妄想しねぇから」
そう言ってバシバシ背中を叩かれた。
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