結:結ぶ恋(続き)

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 私と補佐が……なんて微塵も考えてないその態度に、安心するのと同時にちょっぴり切ない。  ――どうせ、釣り合ってないですよーっだ。  心の中で笑う主任に抵抗しつつ、釣り合ってないだろう自分に少し落ち込んだ。  恋ってやっぱり難しい。  ――――――  滞りなく終わった会議の後、主任と会議室で片づけ作業をしていたら補佐が現れた。    「お疲れ」  少し大きな声で私たちに聞こえるようにそう言って、会議室にそっと入ってくる補佐。  土曜日に見た顔とはまた違う彼の表情に、今まで幾度も見てきた補佐の顔なのにドキドキする。  「「お疲れ様です」」  私と主任、どちらからともなく返事をすると、それが被って室内に響いた。  「いつも悪いな」  言いながら主任に近づき、肩をトンと叩くのが見える。  そんなこと言われたら、ついつい頑張ってしまうのを見越しての態度なんだろうか。  なんて勘ぐりながらも、彼のその態度に嬉しくなってしまう。  一人こっそりとニヤニヤしていたら、補佐が突然主任に向かってすまなそうに話しかけた。  「主任。ここまでしてもらって悪いんだけど、係長が困ってるようだからあっち行ってもらえるか? 後は俺と江藤で片づけておくから」  「え、係長また困ってるんですか? しゃーないですね。すみません補佐。本当にお願いしていいんですか?」  「あぁ。すまないな」  「いや、じゃあ行きますね! 江藤も頼んだぞ」  私の方をチラと一瞬振り返ってから、主任は颯爽と会議室を出て行ってしまった。  ――まさかの、二人だ。  予想していなかった展開にドキドキが止まらなくて、顔が熱くなる。  うわぁあ、どうしよぉ……って、仕事だよ仕事!!  脳内で一人あーだ、こーだと喋りながら格闘する。  無言で会議机を拭きながら、私は顔を上げられずに俯いていた。  「萌優」  いつの間にやら隣に立つ彼に、耳元で名前を囁かれた。  「ほ、補佐っ」  思わず大きな声で叫んで、囁かれた自分の右耳を塞いだ。  恥ずかしさと嬉しさで、顔がどんどん赤くなる。
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