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「違うことが分かって。アイツが結婚したこともあって。俺と恵の間には道がないことがちゃんと理解できて。想いは少しずつ消化できた。
それなのに――頭のどこかで恵に託されたあの詩の意味が分からないことには先に進めなくないと感じ始めてて。探すのを止めたくせに心のどこかで探してた。でもいつまでも見つからなくて、お前のこともちゃんと見つめようとしてなかった……けど」
手を解いて、首の後ろに回された。
ぐっと近づく顔にまたドキリとするけれど、瞳は逸らすことが出来ない。
だって――指先が襟足に触れてくりくりといつかの時のように回すのに、私を見つめるその目には切なさはもうなくて、穏やかな表情をしているから。
「長井に、失ってもいいのかって言われて。お前はまた失うまで逃げるのかって言われて。目が覚めて自分の欲しいものに気がついたら、ようやくあの詩の大事なところに気が付いた」
「大事なところ?」
欲しいもの、とまるで私を指してるかのように柔らかな瞳を向けられて、耐えられなくなる。
きゅうっと温かい胸の締め付けを感じながら、質問を返すことでどうにか自分を保った。
「感じるって」
「感じる?」
「永遠は感じるものだって気が付いた」
「あ……詩の、最後」
「だから。恵と萌優を比べてるなんてことは俺には全くない。ただ、あの詩みたいに。もし永遠を感じることが出来るなら、俺はお前に感じたいってそう思った」
刻(トキ)が止まったかと思った。
――お前に永遠を感じたい。
なんて、どの口が言うんだろう。
ドキドキを超えるその言葉に、心臓が壊れそうになる。
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