結:結ぶ恋(続き)

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 ただ見つめるしかできなくて、私はまた胸が、心が熱くなりすぎて涙が滲んだ。  襟足から手を離した刻也さんが、私の手を両手で握りしめる。  「俺の傍に居てくれ、萌優。気が付くのが遅くてごめん。傷つけてごめん。でも、お前だけは失いたくない」  一筋ポロリと涙が零れた。  もう何度この人のせいで泣かなくちゃいけないんだ、って思うけれど、ポトポト落ちる涙が止められない。  でも今は嬉しい涙だから、何でも許せてしまいそうだ。  「あの」  「ん?」  「私で、いいん、ですかっ?」  尋ねてから、またボロリと零れる。  大粒の涙は頬をゆっくり滑って、繋がれた二人の手に落ちた。  「私なんかで、ほんとにっ」  「萌優。お前聞いてたか?」  「は、い、っ?」  「なんかじゃなくて、江藤萌優がいいんだ。俺は」  「……は、ぃ。じゃあ私、ずっと傍に、いますっ、ヒ……ック」  言った瞬間にぐいっと抱き寄せられて体の傾いた私は、トスッと背中から彼の腕の中に納められた。   背後にある彼の胸に背中がぴったりくっついて、気がおかしくなってしまいそうだ。  こんなこと、今までにされたことない。  近すぎる距離に、目に見えない程の近さに。  直に感じる温かさに。  きゅっとお腹に力を入れて固まった。  困惑し過ぎてどうしていいのか分からない。  それなのに後ろから回された手が、お腹の上で組まれて、さらに私を引き寄せた。  「やっと、捕まえた」  私の右耳に柔らかな唇を触れさせながら、ホッとした声でそう告げられて顔が熱くなる。  さらにぎゅって腕に力が込められて、刻也さんの腕の中にすっぽり収まってしまった。  どこもかしこも近すぎて、触れすぎて、気が気じゃない。   私の頭に顎を乗せてふーっと息を吐いて、落ち着いた様子を見せる刻也さん。  だけど――私は落ち着きません!
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