330人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あの」
「ん?」
とっても優しさ全開の雰囲気は素直に嬉しい。
でも、この状態は初心者の江藤萌優には無理です!
「い、いいつも、こんな、感じなんですか?」
「は?」
「や、だから、ですね? こ、こんなに近いんですか?」
「何が?」
「えと……お付き合い、されてる方との、距離、ですかね?」
彼女、とはいきなり言えない。
お付き合いされてる方、なんて中途半端な言い回しをしたけれど、私はそれに該当するってことでいいんだろうか?
いろいろな想いが脳内で交錯しつつ、自分の膝頭を見つめながら尋ねた。
すると頭上で大きなため息。
「知らん」
ちょっとふて腐れ気味の声で返事が返ってきて、またぎゅっと引き寄せられる。
近づく度に、ドキンと心臓が跳ねておかしくなりそうなことに、気が付いて欲しい。
でも気づかないで欲しい、なんて我儘だろうか。
「知らんって……」
「知るわけないだろ、まともに付き合ったこともないのに」
「え、だって、たくさん関係持ったって」
「はぁ……あのさ、萌優」
「は、はい」
すっごく呆れたって感じの声が、なんだか怖くてしゅんとしながらはいと答える。
けれど返ってきたのは、補佐の時みたいな真面目な声だった。
「まともに好きだったのは多分恵くらいでさ。後は全くそんな気なかったんだけど」
「そんな気っていうのは、その……好きじゃないってこと?」
「まぁ、そんなとこ」
それはそれで結構ショックだったりする。
ほんとに遊んでるってことだし。
うぅう。
妙に悶々として、頭の中に補佐の定義する遊びについて考えてしまう。
好きじゃないのに、つまりその、あっち方面だけのお付き合いってこと? だよね……
なんだか考えてずーんと重くなる。
最初のコメントを投稿しよう!