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いや、でも待てよ?
私だって人のこと言えるんだろうか?
最初の彼も、2番目の彼も。
私だって好きだって気持ちは、ないに等しかった。
ってことは、私は刻也さんと一緒のことをしてた?
でも私は遊んでるつもりはなかったから、それは違うの?
――ダメだ。
私には経験値が無さ過ぎて、考えが追いつかない。
ただ言えるのは、私はこの人がどうしようもなく好きで、私を抱きしめてくれてるこの人も、私を好きだと言ってくれてるってこと。
もういいやそれで。
……って、だから違うって!!
「よく分かんないけど、とりあえず分かりました」
「……」
刻也さんは私の言うことがよく分からないようで、右から横顔を覗き込んできた。
だけど私はそちらを見ないようにして、自分の足先を見つめながら自分の気持ちを整理した。
「刻也さんが遊んでたってのはショックですけど、それはもうどうしようもないので諦めます」
「あ、あぁ……」
「いや、あの、つまりね? 誰にでもこんな風なのかなって」
「こんな風って?」
「えと、あのね? その……き、キス、したりとか、抱きしめたり? するの、かなぁって、思ってです、ね」
しどろもどろに尋ねながら恥ずかしくなってきて、顔を両手で塞いだ。
だめだ。
聞いてる自分が恥ずかしすぎるっ。
「萌優」
私を呼んで、それだけでドキドキさせてるのに、顔を見せない私をさらに覗き込んでくる刻也さん。
それにも負けずに顔を覆ったままでいると……
――ピンポーン
ピザ来た!!
神の助けについ喜んで、パッと嬉しそうに顔を上げて補佐から逃れた。
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