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「姫ー」
不本意な形で呼び掛けられ、僕はとりあえずそれを無視した。無視して、コーヒー牛乳にストローを刺す。
「姫?」
「姫やない」
しゃべりがこういうふうなのは、中学まで西の方にいたから。直す気は、面倒なのであまりない。
「いいじゃんか。合ってるし」
「そんなん、合うても嬉しない」
会話の相手はできすぎ君ではなく、入学式の後に嫌なあだ名を付けてくれたクラスメイト。
僕は続けて彼に言った。
「相澤、俺の名前覚えとる?」
「覚えとる」
彼は僕の終わりの言葉を、ずれたイントネーションで繰り返した。
「白雪姫、?」
「姫、はいらへん」
白雪、というのが僕の名字。
そのせいで、相澤に姫呼ばわりされている。
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