第1話

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* 「姫ー」 不本意な形で呼び掛けられ、僕はとりあえずそれを無視した。無視して、コーヒー牛乳にストローを刺す。 「姫?」 「姫やない」 しゃべりがこういうふうなのは、中学まで西の方にいたから。直す気は、面倒なのであまりない。 「いいじゃんか。合ってるし」 「そんなん、合うても嬉しない」 会話の相手はできすぎ君ではなく、入学式の後に嫌なあだ名を付けてくれたクラスメイト。 僕は続けて彼に言った。 「相澤、俺の名前覚えとる?」 「覚えとる」 彼は僕の終わりの言葉を、ずれたイントネーションで繰り返した。 「白雪姫、?」 「姫、はいらへん」 白雪、というのが僕の名字。 そのせいで、相澤に姫呼ばわりされている。
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