第1話

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できすぎ君、と形容したのは、瀬戸が羨む気も起きないくらいできすぎているからだった。 成績は入学後ずっと学年三位以内から落ちたことがないし、部活には入っていないけれど大抵のスポーツは人並み以上にこなす。 加えて眉目秀麗と来れば。 そういうひともいるんやな、というふうにしか思えなかった。 「姫」 「なん?」 「テスト勉強、してる?」 「しとるよ」 この手の質問に正直に答えるのはどうかと思うけど、相手が相澤なので、僕は気を回すのをやめた。 「何で?」 「何で、ってもう一週間前やし」 「あー、姫何気に勉強できるもんな。数学以外」 確かにそうだけれど。 「相澤には、言われたない」 君は数学以外もアウトやん。 「てか、範囲広過ぎ……」 「じゃあ、勉強しろよ」と瀬戸。 「……やだ」 やれやれ、と僕と瀬戸は顔を見合わせた。向上心って、大事だな。
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