第1話

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普段、私には見せないような、彼女を心配げに温かく見守る姿に嫉妬した。 あの子は、体を重ねて温めるのに利用しないんだろう、とか あの子には優しくシテあげるんだろう、と思ったら、沸々と私の中の黒い心が燃え出した。 聖の両親は、聖と正反対で常に動いてるようなシャキシャキした人達だった。 反対する事もなく、それぞれ挨拶だけ交わすと出張や仕事に出かけて行った。 よく言えば、こんな派手なオバサンを許す寛大な両親だが、悪く言えば無関心。 綺麗で清潔感のある家なのに、テーブルの枯れかけの花が悪臭を放っていた。 その悪臭に慣れてしまったのか、聖も両親も普通にしている。 此処はとても寂しい場所だった。 花にさえ愛情が持てないほど。 だから聖は愛に餓えているんだろう。 こんな寂しい場所から愛を求めて野良猫のように。 それでも私の嫉妬の心は燃え出したままだ。 私に優しくない聖が憎くて息苦しかった。 両親は帰らないらしく、その夜は聖の実家に泊まることになった。 だから聖の両親が居ない寂しい家で、私も聖に優しくなんてしなかった。
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