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朝起きると、ベットにはしわくちゃになったネクタイが2つ落ちていた。
聖の姿はない。
そこらに脱ぎ散らかした服を適当に着ながら、階段を降りる。
「おはようございます。香織さん。すぐに珈琲が出来ますよ」
ケトルが徐々に沸騰する中、聖はデニムだけの姿で花を生けていた。
手首には、私が縛ったネクタイの跡が、うっすら残っているのが痛々しかった。
「昨日の香織さん、激しかったですよね」
「ああ。無茶させたわね」
ゴミ箱にただ乱暴に捨てられた朽ちた花を見ながら、
苦くて渋い珈琲を飲んだ。
「貴方、そんな才能があったのね」
真っ赤な薔薇を木の実や小さな花と一緒に花瓶に活けている聖は、私の方を向いて首を傾げる。
「才能?」
「フラワーアレンジメントよ。それ、センスあるわよ」
真っ赤な薔薇が目立つように他の花たちを添えたり、1本1本丁寧に場所を決めたり。
「そうですかね。でもそうならそれは香織さんのお陰ですよ。
この薔薇、祖母が花を仕入れていた古い付き合いの業者さんが、僕と香織さんの婚約祝いに送ってきたんですから」
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