第1話

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朝起きると、ベットにはしわくちゃになったネクタイが2つ落ちていた。 聖の姿はない。 そこらに脱ぎ散らかした服を適当に着ながら、階段を降りる。 「おはようございます。香織さん。すぐに珈琲が出来ますよ」 ケトルが徐々に沸騰する中、聖はデニムだけの姿で花を生けていた。 手首には、私が縛ったネクタイの跡が、うっすら残っているのが痛々しかった。 「昨日の香織さん、激しかったですよね」 「ああ。無茶させたわね」 ゴミ箱にただ乱暴に捨てられた朽ちた花を見ながら、 苦くて渋い珈琲を飲んだ。 「貴方、そんな才能があったのね」 真っ赤な薔薇を木の実や小さな花と一緒に花瓶に活けている聖は、私の方を向いて首を傾げる。 「才能?」 「フラワーアレンジメントよ。それ、センスあるわよ」 真っ赤な薔薇が目立つように他の花たちを添えたり、1本1本丁寧に場所を決めたり。 「そうですかね。でもそうならそれは香織さんのお陰ですよ。 この薔薇、祖母が花を仕入れていた古い付き合いの業者さんが、僕と香織さんの婚約祝いに送ってきたんですから」
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