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聖とのセックスは気持ちが良いとは言い難かった。
上に乗って私が動く方が聖は好きだった。
一見、女性にリードさせといて転がってるだけに見えるけど、繋がった指先や背中をなぞる仕草で、
実は私の方が良いように動かされていた。
自分が気持ち良いように、自分が温まるように。
それでもちゃんと私も気持ちよくさせてくれるから、まぁそこらの男とするより楽だった。
けれど、段々、あの笑顔が、あの指先が癖になった。
「髪、サラサラですよね」
「眼鏡、知的に見えて素敵です」
顔じゃ判断しないらしく、甘やかせば甘やかすほどよくなついた。
「あなた、家に帰らないの?」
「家、あんま好きじゃないんです」
私と聖は、たまに会えばすぐに寝るだけで、恋人では無かった。少なくとも私はそう思っていなかった。
転々と色んな女の家に泊まるから、色んな家に着替えを置いていた。
だから会う度に違う匂いがした。
それがすごく不快で、それがすごく許せなかった。
「部屋、用意してあげようか?」
父に言ったら、すぐにホテルの一室が聖に宛がわれた。
もちろんラブホの、だけど。
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