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それは突然にやってきた。
「香織さん、結婚して下さい」
「なんで?」
「一番香織さんと居るのが楽だからです」
彼は首を傾げて甘く笑った。
なんて残酷なんだろうか。
彼は私を一生裏切り傷つけながら側に居たいと、笑う。
私が少しでも、貴方が誰かと体を合わせているのが不快だと、傷ついていると、一ミリも傷つかないなんて。
「……駄目ですか?」
『他の女と寝ないで』
それが言えずに、いや言った所で何も変わらないのに。
馬鹿だ。馬鹿。
なんで喜んでいるんだろう。
必死で気持ちを隠しながら私は余裕を持っているように見せようと不敵に笑ってみせた。
「本当に結婚の意志があるなら両親に会わせて」
聖は目を丸くしたけれど、すぐにふんわりと目尻を緩ませた。
「はい。良いですよ」
そこで、私は聖の愛情を測ろうとして馬鹿みたいに傷ついた。
聖と並んで歩く時は、派手な化粧と全身をブランドで着飾った。
私みたいなブスがなんで聖の横にいるのかと、見られるのが面倒だったから。
オバサンが若い男に入れ込んでいるように演出した。
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