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――俺がどれだけお前を探してたか、知らねえだろ。
『あの日』、まさかお前に逃げられるとは思ってなかった。
3日も無理させたから、良いメシでも食わせて、俺の車でドライブでもするかと、気持ち良く眠ったのに、
起きたら、シーツが冷たいんだから腹が立った。
俺に抱かれるのがそんなに嫌なのか、とか、
彼女がそんなに大切か、とか、
無駄に苛々してしまった。
そんなに俺が嫌いなら、とことん嫌われるような手酷い事をした上で押さえつけてやろうと思った。
逃げれないように、囲ってやろうと。
『ごめん、なさい』
電話越しに震える響の声に、何故だか不安が過り車を飛ばした。
気が強くて、自信に溢れていて、苦労なんざしらねーお子様かと思ってたんだけどな。
ホテルのロビーで再会した奴は、明らかに生気もなく、絶望に打ち沈んでいた。
俺が声をかけても、顔さえ上げないで。
「…………」
あの顔を見て、少しだけ冷静さを取り戻した。
あそこまで追い詰めたいわけじゃねぇ。
まずはベットで優しくしてやろう、と。
人がせっかく優しさを見せてやろうとしたのに、
ロビーに戻ると響の姿は無かった。
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