嘉山 狼

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こいつは全然分かってねーが、 俺が仕事を前倒しして休みを取ったり、 後処理もしないお前の代わりに綺麗に体を拭いてやったり、 甲斐甲斐しく世話してるなんて異例中の異例だぞ。 処理ならラブホの休憩時間で十分なんだから。 なのに、たかが裸エプロンの一言で家出しやがって。 こいつの思考回路はどうなってやがるんだ。 今も、俯せに顔を此方に向けて無防備に眠ってやがるが、寒くないようにと布団を肩までかけてやってんだぞ。 ――この俺が、だ。 感謝ぐらいしやがれ。 まだ男になれないくせに、貪欲に求めてくる。 お前も俺に惚れてるくせにな。 響が起きないようにスルリとベットから出て、 全然参考にならなかった雑誌を手にとる。 何なら喜ぶんだろうか。 「狼?」 起き上がった響は、隣に俺が居なかったので眠い目を擦りながら名を呼ぶ。 なかなか可愛いじゃねーか。 「ああ、起こしたか?」 「別に。てか」 布団を体に巻いてやってきた響は、俺から雑誌を取り上げた。 「何、この雑誌。『恋人が喜ぶ、ドキドキプレイ? マンネリ解消に??』」 「こりゃあ酷い嘘つきだった。この出版社潰すか?」 「馬鹿か。これは女が彼氏にしてやりたいプレイだろーが。野郎が野郎にしても喜ばない」
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